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2021年2月10日 (水)

更新情報

■2021.2.10.
交響的三章 J.カーナウ
実に1年7ケ月ぶりとなる新記事の投稿です
久々にこの曲を演奏する予定があり、そのためフルスコアを購入したのがきっかけです
懐かしく、そして改めてなかなか良い曲ですよね!

■2019.5.23.
Twitter 始めてみました
音源堂Twitter
ブログよりずっと気楽にやってみようと思います

■ 2016.6.28.
「リボンの騎士」オープニングテーマ

新音源入手を機に改訂upしました
改めて聴いてみて魅せられたこの素敵な曲、私の大好きなバージョンを収録したLPをコメントにて教えていただきましたので、Web検索を駆使し、速攻で入手しました! このLPの演奏を聴くことができる動画サイトもご紹介しておきます。ぜひ聴いてみて下さい!

動画:「リボンの騎士 オープニング}


拙Blogにお越しになる方は2/3がスマホでご覧になっており、PCは1/3です。
niftyココログのシステム的制約がある中で、自分なりに改行やインデントを駆使し、見やすいプレゼンテーションを工夫してきたのですが、それがスマホでは却って見づらいことになることが判りました。
そこで全面的に見直し、改行やインデントを極力行わないように変えました。ちょっと感じが変わったかもしれませんが、ご理解下さい。
 
♪♪♪

このBlogの画像は左クリックで拡大します。
どうぞ大きな画像でご覧ください☆

♪♪♪

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交響的三章 J. カーナウ


Symphonic Triptych
I. Fanfare - Scherzo
II. Soliloqui
III. March - Fanfare
J. カーナウ (James Curnow 1943- )

「オーストラリア民謡変奏曲」「ロッキンヴァー」「ローン・スター・セレブレーション」など数多くの吹奏楽オリジナル曲や、「ザ・カウボーイズ」をはじめとしたジョン・ウイリアムズ作品の吹奏楽編曲で知られるジェイムズ・カーナウだが、この交響的三章(1976年)はカーナウの名を最初に本邦に知らしめた作品であり、1977年のVolkwein作曲賞を受賞している。
カーナウ
の作品はABAオストワルド作曲賞も1980年「ミュタンザ」1984年「ユーフォニアムと吹奏楽のための交響的変奏曲」の2度受賞するなど高く評価されており、良い旋律と輝かしく鳴るサウンドを持ち、コントラストが鮮やか。その魅力は、「交響的三章」でも存分に発揮されている。
難度の割に演奏効果が高く、随所に聴かせどころのある作品であり、今でもそして末永くもっと演奏されてよいはずである。現在忘れ去られたかのような状態となっているのは如何にも惜しい。

♪♪♪

交響的三章の構成は中間に緩徐楽章ソロリクィを置き、それとは性格の異なる楽章でこれを挟み対比を際立てている。

I. ファンファーレ=スケルツォ
Andante maestoso (♩=66)にてF音のペダルノートが響き続く中(冒頭画像)、Trumpet+Tromboneの厳かなファンファーレが幕開けを告げる。
木管群の密やかなコラールに引き継がれた後、再びのファンファーレに続き、コラールが今度は全合奏で雄大に奏される。やや鎮まってTrumpetとTromboneの応答を挟むや、突如倍テンポのスケルツォAllegro con Spirito (♩=132)へと転ずる-その緊迫が鮮烈である。
スケルツォはHorn+A.Saxのオスティナートを従え、厳めしいイメージを失わぬまま緊張とスピードが迸る音楽となり、高揚して一層エキサイティングな音風景を描いていく。
スイッチ鮮やかにコラールとスケルツォが交互に奏されていくのだが、スケルツォでは心の”烈しい泡立ち”を表現して欲しい。コラールによる最後の昂りが弾けてスケルツォのオスティナートが再現され興奮のまま第1章を閉じる。

II. ソロリクィ
「ひとりごと」を意味するソロリクィはその名の通り、独奏楽器による歌から成る音楽である。ヴィンセント・パーシケッティ「嬉遊曲」のTrumpetソロ、ジェームズ・バーンズ「秋のひとりごと」のOboeソロ…吹奏楽にもソロリクィの名作があり実に味のあるソロを聴くことができるが、ここでもOboeを中心にA.Sax、Horn、Trumpetと哀調に満ちた旋律がSoloに歌い継がれていく。
Adagio con Espressivo (♩=52)、Chimeに始まる打楽器の伴奏に導かれOboeが歌いだす。どこか満たされぬ淋しい感情も内包するように聴こえるこの旋律はFluteに受け継がれるが、ブリッジとなるA.Saxのソロが印象的である。Hornソロの応答から更に密やかな音楽となるが、突如響き渡るシンバルによって覚醒しあっという間に劇的なクライマックスへと昂っていく。
Oboeソロが冷めやらぬ興奮を鎮め、Horn、Trumpetと抒情を湛えた楽句が続いて冒頭のOboeソロの再現へ。醒めやらぬ夢の如き余韻をもって曲を終う。

III. マーチ=ファンファーレ
Allegro Maestoso e Marcato (6/8拍子、テンポ116)、序奏部がベルトーン楽句を挟んで繰返され、そのままリズミックで快活な曲想のマーチ が展開する。続いてClarinet低音+Euphoniumが歌いだすトリオの旋律は素朴で、やはりどこか哀調を感じさせるものである。
序奏部が戻ってくると続いてファンファーレが再現され、マーチとクロスオーバーしてスケールの大きな音楽となっていく。
そしていよいよ堂々とした足取りで終幕へと向かい、ファンファーレのモチーフを読み戻すや強力なリズムを奏する終結句へと至る。

♪♪♪

音源は

汐澤 安彦cond.
フィルハーモニアウインドアンサンブル

の演奏をお奨めする。
録音自体極めて少ない曲だが、この曲を人気曲に押し上げたメリハリの効いた好演である。
漸くCD音源化されたことは大変喜ばしい。ぜひ再評価を!!

【他の所有音源

ドナルド・デロッシュcond.ディポール大学ウインドアンサンブル

※尚、YouTube に作曲者カーナウ指揮による演奏がupされている
https://youtu.be/itk-iV4MDNQ

♪♪♪

さて、カーナウ作品ではミュタンザ(Mutanza)にプロフェッショナルな楽団の録音がなく、現在も”幻の曲”となっている。
この交響的三章にしても、CBSソニーの定番レコード「吹奏楽コンクール自由曲集’79」に収録され、同時収録の「序曲祝典(エリクソン)」「スー族の旋律による変奏曲(プロイアー)」等とともに人気曲となったのだが、なぜかこの曲はCD音源化が遅れたためか、前述の通り現在ではすっかり忘れ去られたかのような状態となっているのだ。
ひと頃に比べれば録音のない「名曲」はかなり減ってきたし、海外盤CDやデジタルミュージックで多くの音源が簡単に入手できるようにはなったが、良い録音のない「名曲」はまだまだたくさんある。
胸のすくような好演の音源が世に出れば、吹奏楽のプレイヤーたちはその楽曲が演りたくて、もう居ても立ってもいられなくなる。時には自分たちの技量の限界も超えて挑戦したくなり…そうして演奏した楽曲の体験と想い出はとても素晴らしいものだ。それはもちろん聴く者も楽しませるだろう。

ぜひプロフェッショナルな指揮者・楽団のみなさんには、そうした魅力溢れた”凄い演奏”を音源として提供して欲しい!!
そうした素敵な演奏により発散された楽曲の魅力は、私たちの世界を滅茶苦茶にしたCOVID-19の脅威に曝される中にあってもプレイヤーたちの音楽への情熱を絶やすことなく燃やし続け、それが再び美しく烈しい炎へと結実する時を必ずや迎えさせるだろうから-。

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2019年7月 8日 (月)

deerzon 誕生日 恐竜 バルーン 飾り付け セット 数字バルーン 男の子 巨大 風船 バースデー ガーランド (数字「9」バルーン付き)

Just Friends (ジャスト・フレンズ)
Lylics by Sam M. Lewis
Music by John Klenner

アップテンポの小粋なピアノ・アドリブのイントロに続いて現れる、4声のTromboneによるハーモニアスなメロディ…たまらなくカッコ良くって、心が躍りまくって、とても抑えられない。中間には3本のTromboneによる熱いアドリブの応酬…Tromboneの活躍を盛り立てる他セクションのバックアップもまたすっごくイイ!
”これぞTrombone”なグリッサンドのハーモニーが響きわたるエンディングも、まさに”おぉー、キマった☆”と思わず声を挙げたくなる鮮やかさだ。
Webの動画で視聴した内堀 勝ビッグバンドによるその演奏は途端に頭から離れなくなった。Just Friendsはジャズのスタンダードとして数多のミュージシャンに奏されてきた名曲だが、私が惚れ込んだのはこのTromboneセクションをフィーチャーした演奏がきっかけなのである。
Tromboneはもちろんソロもいいが、セクションによるハーモニーに圧倒的な魅力があることをつくづく痛感させられる。こんなアレンジで名曲を彩ったハイセンスな内堀 勝※の世界観に完全に魅了されてしまった。Tromboneを演ってる人なら絶対わかるハズ!

※内堀 勝:
自身が奏者として活躍していたこともあり、Tromboneの魅力、使いどころを知り尽くしているのは当然。本格的なジャズだけでなく、吹奏楽にも突抜けたアレンジを幾つも提供している。ちなみに中央大学在学時には吹奏楽部で学生指揮者も務め、同大学を指揮して1965年の全日本吹奏楽コンクールに出場、3位入賞を果たしている。


♪♪♪

元々は1920-30年代に活躍したラス・コロンボ(Russ Columbo 1908-1934)が歌った1931年のヒット曲だが、この曲の持つシャレたコード進行が好まれ、ジャズの世界でスタンダードになったと評される。
カノジョから一方的に「恋はおしまい。もうお友だちでいましょ。」と告げられてしまった男の歌だ。「お友だちでいましょ」はOne Way Loveにおいてもフラれる時に喰らう常套句だと思うが、ふたりが恋人同士だった場合は一層キツい。
英詞のニュアンスが本当の意味で判っていない私にだって、その痛みは充分想像がつく。そりゃ「とても前のようにはいられない」よ。
そんな歌詞なのにノリノリで、本当に洒落ていて明るーい!…のがまた却って哀しいところ。泣きながら布団被って引きこもりたいのに、こんな感じで歌い飛ばす男の哀しさよ。
このシチュエーションが、道化のキャラクターを持つTromboneにまた何とも合ってんだよなー。 (^^)

【出典・参考】
JAZZ“名曲”入門 !」 後藤 雅洋・中山 康樹・村井 康司 編 (宝島社)

Just Friends は内堀 勝ビッグバンドのレパートリーの中でも一番人気のあるナンバーだそうだが、納得である。同バンドの2004年のアルバム「WAYNE」に収録、アドリブの応酬は片岡雄三・橋本佳明・三塚知貴の三氏だ。
もちろん、私がこんなアドリブを吹けるようになることは死ぬまでないが、この曲・このアレンジはぜひ一度は演奏してみたい!この録音のようにあくまで軽やかに、美しい音色でハモりたいものだ。これもまた私の夢の一つである。

♪♪♪

柄にもなく恋をして”センチになって”(I'm getting sentimental over you)、あっという間に想いは募り、彼女のことは頭から離れない”忘れ得ぬひと”(Unforgettable)になったけど… 所詮想いは通じず”ただの友だち”(Just Friends)でって言われて、はいオシマイ。

-そんな話はもう幾世代も前から、そして現在でもあちこちで繰返されてるコトなんだろう。
(だけど、ツラいよね...胸が張り裂けちゃう。)

3曲ともとっても大好き。この世にこういう素敵な音楽があってくれて良かった。
そして自分は運よくTromboneなんて演ってるんだから、愛する曲たちに実際に触れられるよう努力を続けていきたい。

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2019年7月 3日 (水)

Unforgettable

Unforgettable (アンフォゲッタブル)
Lylics & Music Irving Gordon

まさにアメリカ・ポピュラー音楽界の”王様”である、ナット・キング・コール (Nat King Cole 1911-1965)による1951年の大ヒット曲。ジャズ・ピアニストとして高い評価を得ていた彼が、本格的にヴォーカリストとして活躍しその軸をポピュラー音楽へと移しつつあった頃の作品である。この曲は1959年にダイナ・ワシントンによるリヴァイヴァル・ヒットも記録するが、何といっても特筆すべきは1991年にナット・キング・コールの愛娘ナタリー・コール (Natalie Cole 1950-2015)がオーヴァー・ダビング※により亡き父とのデュエット・ヴァージョンをリリースし再び大ヒットさせたことだ。これがグラミー賞を受賞したこともあり、「アンフォゲッタブル」といえば二人のデュエット・ヴァージョンも人々の心に深く刻まれている。

※尚、オーヴァー・ダビングにはナット・キング・コールが1961年に再録したものが使用された。

ナタリー・コールはライヴでも父の映像とともにこのデュエット・ヴァージョンを披露しているが、その素晴らしさは卓越した二人のヴォーカリストが生み出す音楽の純然たる魅力だけではない。オーヴァー・ダビングにも拘らずそこに何とも言えぬ父娘の深い情念を感じさせずにはおかないのだ。その感動的なパフォーマンスは、音楽というものの素晴らしさをまた一つ認識させてくれるだろう。

【出典・参考】
「ベスト・ジャズ ベスト・アルバム」 大和 明 著 (音楽之友社)
「ジャズ・スタンダード名曲徹底ガイド 下」 (CDジャーナル ムック)
「ジャズ名曲物語」 吉村 浩二 著 (スイングジャーナル社) 


♪♪♪

Unforgettable -忘れ得ぬひと、と歌う恋の歌。そう聞くと過去の恋の想い出の曲だと思ってしまうかもしれない。
しかし実はそうではなくて、この歌は現在進行形の熱い恋の歌。Unforgettableとは”ひと時も頭を離れない”という意味なのだ。
それを素敵なラブ・ソングにのようだなんてと例えるあたりは、実に音楽的な歌詞でもある。
ひと時も頭から離れないひと…それほどまでに好きになるなんて、なかなか出会うことのない恋だろう。
-でも本当にそんな風になっちゃうってことは、私も経験している。想いが積上がるほどにそうなってしまうのだよ。

この歌は、そこまでの存在になるひとと出会えたことの幸せを歌い、そして自分もあなたにとってそんな存在=Unfogettableになりたい、という切望を歌う。
 "愛する人にとってのUnforgettable" そりゃあもう、なりたいよねぇ…そうしたリアルな恋心を表現して圧倒的な共感をもたらす歌詞が、しっとりとしてファンタジックな旋律とともに心に迫る、とっても素敵な曲なのである。

♪♪♪

Unforgettableは、Tromboneともとても相性の良い曲。私の大好きなビル・ワトラスもすっごくロマンティックなUnforgettableを聴かせてくれている。-なんて美しくてメロウなんだろう!Tromboneの持つそうした側面が、究極まで現われている演奏だ。
(CD:”BONE-IFIED”)

吹奏楽版でもFlugelhornとTromboneのデュエットをフィーチャーした真島俊夫の名アレンジがある!
(ニュー・サウンズ・イン・ブラス 1999)
あのナット・キング・コールとナタリー・コールのデュエットをイメージさせつつ、中間部ではサンバに乗ってアドリブ・ソロが展開する色彩豊かなアレンジである。本当に良いアレンジでチャレンジし甲斐があるので、ぜひもっともっと演奏されて欲しいと思う。

X-ACTO(エグザクト) ウッドカービングナイフ X3261

私がUnforgettableという曲を大好きになったのは、実はこの真島アレンジを実演する機会に恵まれたことがきっかけ。我が所属楽団の誇る花形トランペッター・Kenちゃんとこの曲でデュエットできたことは、本当に一生の想い出である。
正直今ならもっとうまく吹けたな-というところはあるけれど、それこそ当時の自分ができる限りの練習を尽くしたし、熱い”想い”も込めて吹き切った。私にとって音楽の喜びに浴することのできたステージだったと思っている。

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2019年6月29日 (土)

I’m Getting Sentimental over You

I'm Getting Sentimental over You
(センチになって)

Lylics by Ned Washington
Music by George Bassman

Tromboneによるバラードと云えば真っ先に挙がるスタンダードな1曲。私が5年前一念発起して猛然とTromboneの練習に挑み始めた際、「吹けるようになる!」ことを目標にしたのもこの曲だ。

さまざまなプレイヤーにカバーされている名曲だが、それほどまでに私が憧れたのはやはりトミー・ドーシー (Thomas "Tommy" Dorsey 1905-1956年 冒頭画像) のTromboneソロに他ならない。

”センチメンタル・ジェントルマン・オブ・スイング”と称されたトミー・ドーシーのTromboneが奏でるこの曲のソロは、 「このうえなく甘美な美しい音で抒情的」(大和 明)との形容通り実に素敵なもので、私の心を強く惹きつける。遺された音源はとても古いものだが、録音の良し悪しなど軽く超越した、理屈抜きの魅力に溢れた音楽がそこにはある。”スウィートな美しさ”のTromboneの音色こそは、私にとって永遠の憧れなのだ。

トミー・ドーシーは1920年代後半からニューヨークで育っていった所謂白人ジャズの系譜にあるとされる。
1935年夏、ベニー・グッドマン楽団が得た大反響に始まったスイング時代はビッグ・バンドの全盛期でもあった。ベニー・グッドマン※は前代のアレンジを元に、インテリジェンスと洗練された明るさを加え、従前にはなかった整然としたアンサンブルを打ち出すことで、ビッグバンド・ジャズを一層大衆化させ商業的にも大成功を収めたのである。
当時の大衆にとって、ジャズはあくまでダンスのための音楽であったし、そのための洗練された伴奏音楽としては、遥かに白人ジャズの方がファンの好むところであったのだ。そのベニー・グッドマンに続いたのが、アーティー・ショウでありグレン・ミラーであり、そしてトミー・ドーシーなのである。

※尚、ベニー・グッドマンの功績はジャズを大衆の音楽として広めただけに止まらない、と大和 明氏は指摘した。即ちベニー・グッドマンは優れた黒人ジャズメンであるテディ・ウォルソン(p)やライオネル・ハンプトン(vib)を自らのバンドに入れ、ダンスタイムのインターミッションには(人種的偏見の強かった当時としては異例の)黒白混成コンボによるステージ演奏を行う、というフロンティアであったことも大きな功績と評価している。

このスイング最盛期のジャズは、私にとってとても重要な音楽だ。
それはジャズの持つ本来の精神とそこに根差した魅力や熱気といったものとはまた違うものだという意見も、あるかもしれない。ディープなジャズ・フリークにとっては全然物足りないという側面もあるのだろう。しかし私にとって、スイング・ジャズは理屈抜きに心地良く愉しい!とにかくカッコイイ☆と感じる。
私は手数と跳躍が多く奔放で強烈な熱を発散するアドリブ・ソロだと、”聴き持て余す”ことがある。メロディアスであればあるほど良いと思っているわけではないが、私は”歌”が心に響くアドリブ・ソロを好む。絶妙な音の組合せと高度なセンスで奏され、「ああ、もう一度聴きたい!」と思わせてくれるものが好きだ。そんな私にとって、まさにスイング・ジャズこそは夢のような時間を与えてくれる音楽なのである。

♪♪♪

I'm Getting Sentimental over You は1932年、ダンス・バンドとして結成したばかりのトミー&ジミーのドーシー・ブラザーズ・オーケストラで演奏されたのがオリジナル。この兄弟楽団は程なく解散してしまったけれど、1935年からはトミー・ドーシー楽団のテーマ曲として使われ、まさに同楽団の看板曲そしてTromboneソロの名曲として不動の評価を得た。
トミー・ドーシー楽団には多くのヒット曲があるが、専属の名アレンジャーであるサイ・オリヴァー(Sy Oliver)による「オーパス・ワン」も良く知られるところだろう。この楽団には名だたる名プレーヤーが名を連ねそのホット・ソロをフィーチャーした演奏で大変な人気であった。また若き日のフランク・シナトラが所属し、後に繋がる成長を育んだことも有名である。

トミー・ドーシーは美しく滑らかなTromboneの歌い回しが卓越しているが、アドリブの重要性を認識しており、それ故にTrombone奏者として人気の絶頂にあった1939年にメトロノーム・オールスター・バンドの録音に参加した際においても、人気は2番手ながらアドリブの名手であったジャック・ティーガーデンにソロを譲り、自分は傍役に徹したというエピソードが遺っている。彼もまたベニー・グッドマンと同様に、ジャズの本質を理解した先駆者だったのだ。

【参考・出典】
「ジャズ 歴史と名盤」 大和 明 著 (音楽之友社)
「ベスト・ジャズ ベスト・アルバム」 大和 明 著 (音楽之友社)
「JAZZ管楽器」 ジャズ批評編集部 編 (松坂)
「ジャズ・スタンダード名曲徹底ガイド 下」 (CDジャーナル ムック)

♪♪♪

I'm Getting Sentimental over You は恋になど縁がないと思っていた男が突然恋に落ちてしまう、その想いを歌ったものである。
この男はなぜ恋をすることがなかったのか-
女性に興味はあっても ”恋”する心はないままだったのか
恋に傷付き、もう女なんて…という気持ちだったのか
長い間、恋する感情を忘れてしまっていたのか-

いずれにしても、”恋”はしてしまうもの。ある時突然に”落ちてしまう”もの。恋とはそういうもの…するぞ、するぞと思って待ち構えているものではない。心惹きつける素敵な女性が現れた、その瞬間に生じるものだ。
-この歌詞にはそうした”恋”の不思議さがよく表れていると云えよう。

曲としては上行型旋律の甘美さが心を捉える。特にA-HiC#の跳躍と、そのHiC#に表れるTromboneハイノート特有のスウィートさが堪らない。その音色と艶やかなヴィブラートはTromboneの魅力を発散しまくっているではないか!続く第2旋律も然り、である♪

吹奏楽版としても、真島 俊夫による原曲キーのアレンジが出版されている。
音源は
中谷 勝昭cond.
東京佼成ウインドオーケストラ
Trombone Solo:萩谷 克己
Tromboneの魅力を充満させたこの名曲、ビッグ・バンドでも吹奏楽でも、もっと演奏されて欲しいと思う。
そして私自身…憧れのこの曲にスキルが届いた今、自らが実演する機会を心から待望しているのだ。

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2019年6月16日 (日)

カンタベリー・コラール

Canterbury Chorale
J.ヴァン=デル=ロースト
(Jan Van der Roost  1956- )

作曲者がイギリス南東部にある世界遺産、カンタベリー大聖堂(Canterbury Cathedral /冒頭画像)を訪れた際の印象をもとに、ブラスバンド作品として1990年に作曲したもの。1993年には吹奏楽版も編まれ、大変優美な旋律と、壮麗な偉観を誇る建築物を表す堂々たる骨格を持つ名曲として、広く愛されている。

♪♪♪

(画像:トリップアドバイザー提供)

「明るい陽光から一歩聖堂内に足を踏み入れたとき、立ち並ぶ石柱とその先の信じられないほど高い幽暗の天井から押し寄せるように響いてくるオルガンの響き、そして振り返ると西窓のステンドグラスから射し込んでくる煌く光は、たちまちにして現実空間からの離脱を感じさせるのに十分であった。」

「イギリスの大聖堂」の著者 志子田光雄・富寿子夫妻は、初めてカンタベリー大聖堂を訪れた際の印象をこのように語っている。これはヴァン=デル=ローストがインスピレーションを得た印象についても、具体的なイメージを示唆してくれるのではないだろうか?
まず本楽曲の題材となったこの「カンタベリー大聖堂」について、本著からの引用を中心に整理しておきたい。

大聖堂(Cathedral)とはキリスト教の教区において司教の在籍する=司教の座のある教会堂を意味する。大聖堂は大規模なものであることが多いが、大聖堂よりも大きな教会堂もまた多数ある。「大」聖堂との邦訳から誤解が生じがちだが、大きさそのものによって分類されているものではない。 「大聖堂は信仰に基づく神への礼拝の場所であるとともに、神を賛美するために人間の能力を最大限に発揮した芸術でもある」 (志子田光雄・富寿子)


■1,400年の歴史
キリスト教のイギリス伝導は563年、アイルランドの聖コルンバがアイオナ島 (スコットランド西岸沖/インナー・ヘブリディーズ諸島)に修道院を建立したのが端緒だが、一方ローマ教皇による伝導は597年に聖アウグスティヌスと40人の僧侶が派遣されたことに始まる。イギリス南部に上陸した彼らは当時ケント王国を台頭させていたエゼルベルフト王とその后に洗礼を授け、布教を本格化していく。その洗礼の地こそがカンタベリーであり、601年聖アウグスティヌスはカンタベリー大司教に任命された。これが1,400年を超えるカンタベリー大聖堂の歴史の黎明である。

1170年には当時の国王との対立により、トマス・ア・ベケット大司教が殉教する大事件も起こった。そうしたカンタベリー大聖堂は、中世においてヨーロッパ全土から巡礼者を集めていたし、現在でもイギリス屈指の巡礼地であり続けている。

■イギリス国教会の総本山として
T.D.Well ペット用ドライブシート アームレスト ベンチシート 後部座席 耐久性 防水性 シートベルト チャイルドシート 黒 商業活動の活発化による国力の増大とその国力への自信に伴うナショナリズムを背景に、1534年ヘンリー八世は「首長令」を発し国王を教会の唯一の最高指導者と認めさせ、さらに修道院を解散してその財産を没収するなど「宗教改革」を断行した。元々は熱心なカトリック教徒であったヘンリー八世がこのような改革に踏み切ったのは、実は自身がキャサリン妃と離婚する(=婚姻は無効とする)のがきっかけであったことは有名な史実である。(テューダー朝の安泰のため男子の世継を渇望していた王ゆえか、はたまたその好色ゆえか、ヘンリー八世は6度も結婚している。)
キャサリン妃の出身であるスペイン王家の離婚阻止の動きがローマ教会を動かすという国際問題へも発展、遂にヘンリー八世はローマ教会と袂を分かち、自らが最高指導者である「イギリス国教会」を成立させることとなったのである。
1533年、ヘンリー八世は件の「婚姻無効」主張のブレーンであるトマス・クランマーを空座だったカンタベリー大司教へ任命、大司教となったクランマーが「婚姻無効」を認める形となった。以来、カンタベリー大聖堂はイギリス国教会の総本山として現在に至っている。

※但しヘンリー八世の「宗教改革」では信仰内容の改革は伴わず、次代エドワード六世がプロテスタントの教義を取入れたものの、続くメアリ一世がカトリックに復することを強行し(新教徒への迫害ぶりから”ブラッディ”(=血染めの)メアリと称されたことは有名)、反動が生じた。かかる混乱を経て、 1559年エリザベス一世の諸改革によりイギリス国教会制度は確立を見たのである。


※カトリックにもプロテスタントにも属さぬイギリス独自の教会制度である「イギリス国教会」には、次のような特徴がある。
①イギリス国王が教会の首長となること(国王が教会の最高統治者となる)
②主教制による教会組織(国王-大主教-主教-副主教-司祭長-司祭)
③教義はカルヴァン主義に近い(信仰義認説、聖書主義、予定説など)
④儀式はカトリックのものを残す(聖職服の着用、聖餐式の時の跪拝など)

■カンタベリー大聖堂の属性と特徴
まず組織形態としては、宗教改革以前の”世俗的大聖堂”である「オールド」及び、19世紀以降新たに加えられたイギリス国教会の大聖堂である「モダン」とに挟まれた「ニュー・ファウンデーション」に属する。即ちヘンリー八世が修道院組織の解散と多くの建物の破壊による改革を断行した時、宗教的環境を新たに整えるために旧大聖堂を改めて大聖堂にしたものの一つである。

また大聖堂の建築様式には年代の古い順に「ノルマン」「初期英国ゴシック」「装飾的ゴシック」「垂直的ゴシック」「イギリス・ルネサンス」の5つがあるが、カンタベリー大聖堂は「垂直的ゴシック様式」とされ、その名の通り直線的なデザインである。また黒死病流行による人手不足のため制作困難となった手の込んだ彫刻は影を潜め、代わりにステンドグラスが発達したことも特徴的とされる。カンタベリー大聖堂の写真をみればそうした特徴が一目瞭然であろう。フランスとの百年戦争により高揚したナショナリズムが独自の文化としての”垂直様式”を育んだのである。

「長い身廊の両脇に林立する柱は、途中トリフォリウムで中断されることなく、柱頭の上はすぐクリアストーリーになっているため、そびえる柱列とそのあいだのアーケードのアーチはあくまで高く、柱頭から派生するリプによって支えられている丸天井は息をのむほどの高さにある。巨木の林立する森林を想起させる列柱群のつくり出す空間を伝って降りてくるパイプオルガンの音色に触れるなら、たちまち我が身の卑小さを感じさせられるであろう」 (志子田光雄・富寿子)

※尚、クリプト(地下室:上画像)は大聖堂の基礎部分のアーチを支える如何にも力強い柱が林立しているが、これは1070-1077年に作られたロマネスク様式のものである。このロマネスク様式旧大聖堂の身廊は1377年に取壊され、現在の垂直様式に建替えられたのである。

【出典・参考】
「イギリスの大聖堂」 志子田光雄・富寿子 著 (晶文社 1999年刊)
樋口幸弘によるCDリーフレット解説 (fontec B00006LF5I)
カンタベリー大聖堂 公式HP
世界遺産オンラインガイド
世界史の窓 HP    詳説 世界史B (山川出版社)

♪♪♪


終始ゆっくり(♩=63)とした非常に幅広い音楽で、そこには美しさ、暖かさ、敬虔さといった高次元の精神性を感じ取ることができよう。それが端的に現れているのが、冒頭から提示される旋律である。全編がこのムードに統一されており、高揚しても品位を失うことはない。

続いてまずHorn+Euphonium、そしてSop.&Alt.Saxのアンサンブルで二度繰り返される変奏が大変印象的。豊かな響きのハーモニアスなソリが夫々に楽器の音色を活かし、深遠さや雅さというものを描き出している。
そして最初のクライマックスは、ティンパニのロールに導かれた輝かしいTrombone(+Euphonium)のソリで迎える。Tromboneという楽器の高貴で神聖な側面を捉えた見事なものである。
音楽はさらに壮大なクライマックスに向って、緩やかにテンションを上げていく。その様はまさに天に向ってひたすらに伸びていく大聖堂の建物そのものだ。
重厚でスケールの大きな堂々たるオルガン・サウンドに包まれたとき、脱俗の悦びにも包まれることであろう。

最後はEuphoniumのふくよかなソリに見送られ、静かで深い響きが遠く消えてゆく。

♪♪♪

作曲者ヤン・ヴァン=デル=ローストベルギー生まれ。現在のヨーロッパを代表する吹奏楽作曲家のひとりで、本邦の音大で教鞭を執るなど日本とも馴染みは深い。「スパルタクス」「プスタ」「モンタニャールの詩」「アルセナール」など、ダイナミックな作風でヒット曲は数知れず。
彼の作品は構成力に優れており、現在のヨーロッパ作曲家がどうも冗長さに陥る傾向のある中で、そうした欠点を感じさせない貴重な存在である。

♪♪♪

推薦する音源は以下3つ。この曲の魅力を生かす、たっぷりとしたテンポと充分な音の保持、息の長いフレーズ感が好演の大前提となる。

ノルベルト・ノジcond.
ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団
安定したサウンドと音色がスケールの大きな音楽を構築しており、多少の不揃いなど吹き飛ばす。特にTrumpetのハイ・ノートの音色が気高い輝きを備えており、感動的。


イーヴォ・ハデルマンcond.
ゼーレ聖セシーリア吹奏楽団
非常に丁寧な演奏。丹念に歌い上げ、また確りと構成を捉えている。Euphoniumの”黒い”音色は絶品であり、またエンディングの響きは最も本作品に相応しいものだと思う。


ヤン・ヴァン=デル=ローストcond.
大阪市音楽団 (Live)
自作自演Live盤。バスサックスとオルガンを加えた超豪華版であり、作曲者の意図・イメージを端的に伝える。但し表現が積極的な一方、この曲が要求するストイックさにはやや欠けるか。


【その他の所有音源】

鈴木孝佳cond. ネヴァダ大学ラスベガス校ウインドアンサンブル (Live)
武田 晃cond. 陸上自衛隊東北方面音楽隊
ユージン・コーポロンcond. ノーステキサス大学ウインドシンフォニー
鈴木孝佳cond. TADウインドシンフォニー (Live)
松元 宏康cond. ブリッツ・ブラス
須藤 卓眞cond. なにわオーケストラル・ウインズ (Live)
ジャンカルロ・ロカテッリcond. ソンキーノ市吹奏楽団

(Originally Issued on 2008.2.11./Overall Revised on 2019.6.16.)

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2019年5月25日 (土)

新緑練習 2019.5.25.

行きつけの公園で今日も朝からTromboneを吹いてきました。
つい先日「花見練習」だったのに、季節は巡って今日はもう「新緑練習」。
春というより夏の匂いがしています。

新たな”野外練習のお供”として、K&M社の譜面台「107 Black」を導入しました!
A3より大きな所謂楽譜サイズ(460mm×313mm)の楽譜を置いてもはみ出さないワイドな楽譜台もさることながら、何といってもゴム付きの大きな脚で安定感抜群です!
相応重量があり堅牢なWittnerの譜面台ですら風に耐えられず、これまで公園練習では苦労していましたが、これでかなり改善されました。
とにかく大きくて重いので、携帯には不便なのですが公園練習には自転車で通ってますから問題ありません。

もっと早く導入しておけばよかった!
これでますます練習に打ち込めます。がんばるぞー☆

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2019年5月 3日 (金)

改めて、チャイ5 2019.5.3.

先日のデンマーク国立交響楽団の演奏を聴いて、チャイコフスキーの交響曲第5番に改めてハマっています。特に第2楽章が好きです♪

この第2楽章では、中間のクライマックスにバストロンボーンがたった1本で全合奏のffと対峙する…!
そのさまも大好きなのですが



何といっても ホルンのソロが最高です。チャイコフスキーに限らず、ホルンという楽器に対する作曲家の期待と信頼は厚いですよね。
トロンボーンに、なかなかこんなソロは書いてもらえません。(TT)

 

でも、このソロならトロンボーンでも吹ける音域なので…
今、私はこのメロディを実際に吹くことですごく心癒されています。ありがたいです。

本当に素敵なメロディなのです。
ロマンチックであり、力強く堂々ともしていて、シャイでもあり、哀感に満ちて切なくもあり…。

魅力ある旋律というのは、本当にさまざまなイメージを奏者や聴衆に抱かせ、豊かに膨らませてくれます。
こういう旋律を生み出せるというのが、天才の証でしょうね。


今の私には"切なさ"が一番色濃く映っています。
それならそれで、そこが表現されるように吹きたいものです。

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2019年4月 7日 (日)

レガッタ・フォー・ウインズ

Regatta for Winds
D. シェイファー  (David Shaffer 1953- )

※冒頭画像:New York Yacht Club Annual Regattaの模様

急-緩-急の典型的な序曲形式の小品であり、2つの旋律とそのモチーフとで編み上げられたシンプルで明快な楽曲だが、魅力的な旋律と細やかにニュアンスを変化させる展開、現代的で洒落たハーモニーとサウンドに惹きつけられる。快速部の弾けるような快活さ、トランペットソロに始まる甘美な中間部のいずれもがストレートに聴くものへと届き、その心を躍らせる素敵な作品である。

「レガッタ」
とは原動機のついていないボート(手漕ぎボートやヨット)のレースのこと。本邦で”レガッタ”というと早慶レガッタなど手漕ぎボートのイメージが強いが、出版された楽譜セットの表紙にはヨットのイラストが描かれていることから、本曲名の「レガッタ」はヨットレースを指すと推定される。
アメリカでは1845年に始まった最も歴史あるNew York Yacht Club Annual Regatta(冒頭画像)をはじめとしてヨットレースが盛んに行われており、例えば海に恵まれたフロリダ州マイアミではコロンブスによる新大陸=アメリカ発見(1942年10月12日)を祝うColumbus Day(10月第2月曜)に「コロンバス・デー・レガッタ (The Columbus Day Regatta)」が1960年以来毎年開催されている。さらに「レガッタ・フォー・ウインズ」が作曲された1993年にはヨットレースのワールドカップである「マイアミ・オリンピッククラス・レガッタ(Miami Olympic Classes Regatta)」も新たにスタートしていて、当時ヨットレース人気が一層高まっていたことを窺わせる。
※上画像左:The Columbus Day Regatta 同右:Miami Olympic Classes Regatta

作曲者デヴィッド・シェイファーは、作曲当時オハイオ州のマイアミ大学(その名はインディアン部族名に由来、フロリダ州にあるマイアミ大学とは別物)にてマーチングバンドの指導者として活動しており、本作を委嘱したのもオハイオ州の高校であった。オハイオ州はアメリカ内陸部のエリー湖※岸に接しており、こちらでもヨットレースが盛んに開催されているのである。
エリー湖ではオハイオ州のクリーヴランド(Cleveland)やプット・イン・ベイ(Put-in-Bay)で開催されるレガッタが著名であり、シェイファーはそうした身近なヨットレースを見て、曲のインスピレーションを得たのかもしれない。

※エリー湖 (Lake Erie)
アメリカ五大湖の一つで25,821㎢の面積は世界第11位の淡水湖。日本の四国(18,298㎢)よりもずっと大きく、ヨットレースが開催されるというのも納得である。ただ工業排水による深刻な汚染は永年の問題であり、改善の進んだ現在でも回復の途上という。
ヨットレースとしてはクリーヴランドで開催されるレース・ウィーク (Annual Cleveland Race Week:上画像左)や、サウスベース島にあるプット・イン・ベイにて開催されるインターレイク・ヨット協会レガッタ(ILYA Sail Regatta:上画像右)などが挙げられる。

♪♪♪

「活発なテンポの現代的なリズム、そして大胆なコード進行で始まるキラキラと輝かしい作品である。美しい中間部アンダンテではトランペット・ソロがフィーチャーされ、伴奏も実に心地良い。これが快速な”レガッタ”の部分と見事な対照を成している。」
との出版社(Barnhouse)解説にもあるように、生き生きとした快速部はやはりレガッタ(ヨットレース)の様子を表しているものである。
Allegro brillante ♩=152 にて第1主題のモチーフが華々しく奏されるオープニング…!

エネルギッシュでスピード感あふれるモチーフ提示を畳みかけ、またダイナミクスと楽器の色とを絶妙に入替えつつ、鮮やかな序奏部を織り上げていく。そして更に16分音符でクレシェンドするスネアに導かれて全貌を現わしたメロディの、浮き立つような爽快感が一気にこの曲へ聴く者を引込むのだ。
ここではモダンにハーモナイズされた旋律が印象的であり、またカウンターのベースラインもとても小気味良い。

さまざまな打楽器で彩り、ベルトーンも効果的に使って旋律は次々に別の楽器へと移り、リズムと色と表情を変化させながら”快活さ”を失うことなく進行していく。まさに大自然の中で水上を滑るように推進し競い合うヨットレースの、情景だけでなく熱気までも感じられるようだ。

高揚した音楽は応答するClarinetとA.Saxのソロによるブリッジを挟み、リリックなTrumpetソロによりAndante moderato ♩=96の中間部へと入る。
この第2旋律がまた実に良い!Fluteがこの旋律を引継ぎ木管のみのアンサンブルとなるところがまた情緒に満ちていて心憎いばかり。
こうして受け継がれ朗々と奏されるメロディが、バックとともに徐々にスケールと抒情を高めていくさまが感動的である。僅かに速まるテンポとともにHorn(+Sax)のオブリガートが絡んでクライマックスとなった後は、すぅーと収まってTrumpetソロがもう一度奏でられ中間部を仕舞う。


再びAllegro brllanteへ戻るとTemple Blockの性格的な音色に続いてChimeが打ち鳴らされ、キラキラとしてスピード感漲る序奏部を形成し第1主題が戻ってくる。すると今度は僅かに憂いを匂わすFluteソロが現れるのだが、
これが曲中絶妙なアクセントになっていて…何というセンスの良さだろうか。
再現された主部は変拍子を挿入したのちテンポを緩めMaestoso ♩=96で中間部を回顧した後、小粋なsub.PからクレシェンドしてVivace ♩=162+(162以上)のコーダに突入し、一層エネルギッシュに曲を締めくくる。

本当に旋律は2つだけだしシンプルなのだが、気の利いた譜割(リズム)を含めて旋律がとても魅力的だし、微妙な変化・ニュアンスを織り込んで飽きさせない創意工夫には作曲者の才能が溢れている。まさにオープナー向きの曲で親しみやすいが、とにかくセンスが良い!そう感じさせるのは「天からふってきたひらめき」もさることながら、周到に張り巡らされた作曲者の”技”とそれを生み出す”想い”あってのことなのである。

作曲家が世に送り出す楽曲はこうでなくてはいけないし、演奏する側も楽曲を判った気分で安易に”流す”のではなく、楽曲の魅力を確りと発揮した演奏へ意を尽くしたいものだ。

音源は
エドワード・ピーターセンcond.
ワシントン・ウインズ
がこの曲の真価を発揮した秀演である。出版社デモ音源として作成された録音の常として「如何にもスタヂオ」感は拭えないが、それを跳ね返して余りある”デモ職人”の面目躍如たる高次元な演奏。
冒頭流れだす快活部のクリアーでスピード感溢れる音色からしてもう素晴らしい。中間部のソロも実に品の良い抒情を存分に聴かせ嘆息させられるし、全曲を通じ目まぐるしく変化するニュアンスも確り表現され、メリハリに富んでいる。

【その他の所有音源】 小澤 俊朗cond. 尚美ウインドオーケストラ

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2019年4月 6日 (土)

花見練習 2019.4.6.

晴天の土曜日、まだ桜が咲いてくれていました!
まさに”花見練習”です♪


悲しみの沼に沈んだときも
ひたすら楽器だけは吹き続けていました。

おかげで 他にはなに一ついいことのない中ですが
Tromboneはさらに上達してきています

楽器を吹くことで本当に癒されて…

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2019年3月20日 (水)

おもちゃの兵隊の行進 (閲兵式)

Parade of the Wooden Soldiers
(Parade of the Tin Soldiers / Parade der Zinnsoldaten)
L. イエッセル (Leon Jessel 1871-1942)作曲
J. J. モリセイ(John Jacob Morrissey 1906-1993)編曲


本邦では何といっても日本テレビ(NTV)系列で月-土曜11:45から放送されている「キューピー3分クッキング」のテーマ音楽として有名な曲である。1963年に始まった長寿番組であり、この番組のおかげで名前は知らなくても曲自体はよく知られているはずだ。曲名表記は微妙に異なる幾つかが国内外ともに存在しており、「キューピー3分クッキング」では”おもちゃの兵隊のマーチ”としている。

※CBCも別バージョンの「キューピー3分クッキング」を制作しており、そちらのオープニングでは歌劇「フィガロの結婚」の”恋はどんなものかしら”(W.A.モーツァルト)が使われていた時期もあるという。いずれもシンセサイザーによる特徴的なアレンジだ。
番組ではこのアレンジの一部だけが演奏されるのだが、CDも発売されていて全曲を聴くことができる。なかなかに愉しい音楽に仕上がっていてオススメである。
尚、編曲:グリフィン 演奏:野田智子とのクレジットがある。


作曲したレオン・イエッセルは代表作「シュヴァルツヴァルトの乙女」をはじめとするオペレッタの作曲家として知られる。
ドイツの音楽学者アルブレヒト・デュムリンク (Albrecht Dumling)の著したイエッセルの伝記 (1992年刊、改訂再刊2012年)によると、イエッセルの人生の終幕は「おもちゃの兵隊の行進」の曲調とは真逆の、極めて悲劇的なものであった。ユダヤ人であった彼はナチスにより差別と迫害を受け、死に至っている。キリスト教への改宗ユダヤ人であり、保守的な愛国主義者であったイエッセルは勃興するナチスへ期待すら抱いていたにもかかわらず、である。

【参考・出典】 小さな木製調味料スプーン、5PCSアイスクリーム調味料用の小さな木製スプーンシュガーコーヒーティーシュガーキッチンクッキングツール


イエッセルは1937年に帝国音楽院から排除され、彼の作品は録音も楽譜の頒布も禁じられてしまった。そして1941年にはゲシュタポに逮捕され、虐待を受けた末に1942年ベルリン・ユダヤ人病院にて息を引き取った。
イエッセルの遺した作品は第二次世界大戦後、設立されたイエッセル財団にて作曲家ノルベルト・シュルツェ (Norbert Scultze:大戦中の流行歌「リリー・マルレーン」の作曲者として有名) がその推奨に努めたことで漸く再評価されたという。

※イエッセルは吹奏楽曲としてもまさにドイツ的な作風の行進曲を幾つか遺しており、アメリカ海軍アカデミー・バンドの録音で聴くことができる。
収録曲:Die Parade der Zinnsoldaten, Herz und Hand fur's Vaterland, Morgenrote, Vom Fels zum Meer, Die Belden Husaren, Wir Siegen !, Im Bunten Rock


♪♪♪


「おもちゃの兵隊の行進 (閲兵式)」(1897年)の原曲はピアノ独奏曲である。このシンプルな原曲は、ピアノ小品集アルバム(左画像)に収録されたバラージュ・ソコライの演奏でお聴きになることををお奨めしたい。美しい音色で自然に奏されつつ、曲の場面場面のニュアンスはメリハリをもって表現されており、実にイメージ豊かな音楽的で品のある素敵な演奏である。
※ピアノスコア:「piano_score.jpg」をダウンロード
尚「(同名の)オペレッタの中の1曲である」という情報が一部にあるが、その証跡を見つけることはできなかった。

夜になると、錫(すず)で出来た兵隊たちが次々とおもちゃ箱から出てきてパレードを始める。隊列を組んで誇らしく胸を張り、意気揚々と行進するおもちゃの兵隊たち!
しかしやがて朝が来て陽が射し込むや…雪崩をうって大慌てで一斉におもちゃ箱へ戻っていく-。
そんなファンタジーな内容から、「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)や「おもちゃの行進」(ハーバート)と並んで”クリスマス・チューン”として演奏される楽曲でもあるのだ。明快で屈託がなく、そして実に愛らしい音楽となっている。

※この曲の英文表題には「おもちゃの兵隊」の意味で木製(Wooden)としているものもあるが、独文原題(Parade der Zinnsoldaten)にあるように当時欧州の「おもちゃの兵隊」とは”錫製”である。
 1838-1842年に書かれたアンデルセン童話「しっかりものの錫の兵隊」こそは、まさにこの曲に描かれた”おもちゃの兵隊”とイメージの合致するものだろう。(年代的にイエッセルもこの童話を知っていたはずなのだ。)
この童話では1本の古い錫のスプーンを溶かして25体のおもちゃの兵隊を拵えた、とある。「しっかりものの錫の兵隊」は動き出したり行進したりはしないものの、人間と同じ感情を持っていて愛らしい紙製の踊り子に恋をする…。
なのに兵隊は子供の理不尽な扱いによって冒険をさせられ、その運命を翻弄されるのである。どぶねずみの喚く暗渠の中を兵隊が紙の舟で流れていくなど、童話特有の一側面である歪んだ幻想を描いた情景の中でストーリーは展開し、それが漸く落ち着いた途端、兵隊の最期が訪れて物語は終わる。またも子供の理不尽な行動によって兵隊は突然暖炉に投げ込まれてしまうのだ。そこへ愛するあの紙製の踊り子が風に飛ばされてきて忽ち一緒に燃え上がる。兵隊は溶けてハート型の小さな錫の塊になっていた-。

そこにはもの哀しさの一方で、たとえ一瞬ではあっても愛するものと確かに結ばれたという、ささやかで無力な幸福感が漂う。この結末は子供というより、大人の心にこそ響くものと云えるだろう。そんな幸福ではあっても、間違いなく幸福なのである。

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「おもちゃの兵隊の行進(閲兵式)」は予て吹奏楽にも編曲され楽しまれてきた。その最も古いものとしては、あのジョン・フィリップ・スーザ自身の指揮によるスーザ・バンドが1912年11月10日に同バンドの新たなレパートリーとして演奏したという記録がある。
※New York Times 記事 「ny_times_2019_11_11.pdf」をダウンロード

本稿で採り上げるのは、ジョン・モリセイが吹奏楽にアレンジしたヴァージョンである。「皇帝への頌歌」「中世のフレスコ画」などの作曲者として知られるモリセイらしく、原曲の持つ明快さを率直に生かしつつ、ダイナミックな吹奏楽の魅力を伝える豊かなサウンドの編曲となっている。とにかく、なんて愉しい曲なのだろう!

オープニングはこれからおもちゃ箱の中でそーっと始まる、不思議で愉快な出来事を表現するユニークな楽想である。ClarinetとTrumpetが交互に奏でる不協和音でファンシーなイメージを醸し、その中でドラムが徐々に大きく聴こえてきて、いよいよ行進の始まりだ。(冒頭画像)
まずはミュートを着けたTrumpetのソロから旋律が奏でられる。
これが徐々に賑やかになり、文字通り元気いっぱいな音楽になっていくのが心地良い!
続いて愛らしい旋律が木管に現れ、小さなおもちゃの兵隊の可愛らしい感じが伝わってくるが
今度はちっちゃいくせにちょっと威張って堂々と行進するその姿が低音楽器によってユーモラスに描かれる。
音楽は繰り返され、いよいよ活気を帯びて最高潮となるが、朝が来て行進は急ブレーキ!
再びファンシーな楽想が戻ってきて重厚なエンディングへと続くが、最後は兵隊たちが慌てておもちゃ箱に戻る様子のsubito Allegroで茶目っ気たっぷりに曲を締めくくる。

♪♪♪

音源としては以下をお奨めする。
指揮者不詳
アメリカ陸軍野戦部隊バンド

1998年に出版された同バンドのクリスマス・アルバムであり、モリセイ編曲版の全曲録音。優れた演奏と録音でその魅力を伝える。(指揮についてはリーフレットに記載なし。)


フレデリック・フェネルcond.
ダラス・ウインド・シンフォニー

アルバムのコンセプトに拠り”マーチ”としてモリセイのアレンジをフェネルが編集したバージョン。小気味良いドライブ感で、さすがはフェネルというべき好演。

♪♪♪

フェネルはモリセイ編曲のこの曲を”Marches I've Missed”の一つと位置付けた。まさにその通りであり、この「おもちゃの兵隊の行進」という曲自体が、そして愛らしいモリセイのアレンジ版が、埋もれ忘れ去られてしまったらあまりに淋しい。
楽譜は絶版になって久しいが、再出版され吹奏楽においても再び大いに楽しまれる一曲となってほしいものだ。

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2019年3月15日 (金)

ファビオ・ルイージ指揮デンマーク国立交響楽団を聴いて 2019.3.15.

先日、元職場上司のご相伴にあずかり ファビオ・ルイージ指揮デンマーク国立交響楽団のコンサートを聴くことができた。近年、管弦楽や吹奏楽のプロフェッショナルな楽団のコンサートに足を運んでも、満足できないことばかりだったが、嬉しいことに今回は違った!

ファビオ・ルイージの真摯で情熱的な、切れ味鋭い指揮にオーケストラが一体となって応え創り上げられた好演であった。最初の歌劇「仮面舞踏会」序曲(ニールセン)からしてスピード感と生気に溢れ、オケもノリノリである!良く知らない曲だったのでCDで予習していったのだが、この曲の演奏としてかなりの出来映えだったと思う。

ベートーヴェンの「皇帝」を経て、メインはチャイコフスキー交響曲第5番だが、これがまた素晴らしかった。特に第2楽章の立体的な音楽の表出は特筆できるものではなかったか。各ソロの奮闘も光った。この演奏のおかげでもう一度この”5番”を徹底的に聴き直したくなり、今猛然と音源を集めているところだ。

完璧な、とか歴史的名演、とかではないかもしれないが、相応の技量を有するオーケストラが信頼関係に結ばれた指揮者の明確な統率のもと、「その気になって」演奏・表現した好演であることは間違いない。

日本では、一流といわれる楽団にすら、今それがあるのだろうか?
デンマーク国立管弦楽団は世界のトップレベルとまではいかないと思うが、日本のトップ楽団ですら技量面でもデンマーク国立管弦楽団に及ばないなと感じた。しかし技量面もさることながら、何よりも、(馴合いでなく)あるべき信頼関係に固く結ばれた指揮者と一体となり、「その気になって」演奏しているのだろうか?と強い疑念を抱いたのだ。

まさかそんなことを考えているはずはないと思うが、ソツなく”お仕事”をこなしているような、肝心のものが伝わってこない演奏が多すぎる気がしている。心は「そんなつもりはない」であっても、それが実際に伝わってこなければ意味がないではないか。プロフェッショナルなのだから…。私風情が偉そうに言う気はなく、また好みの問題もあると思うが、この指摘は外れてはいないと思うのだ。

演奏家の方々へ期待するとともに、我々も真に音楽の悦びを評価しある時は厳しい目でみる聴衆でなければならない、という思いを新たにした。


-つくづく2018年は散々な年だった。
誰が悪いかと云えば「自分が悪い」ということになるのだが、悲しい思いをすることばかりで全然「救い」がなかった。
Bill Watrousが7月に、そして私自身が暗黒の闇を彷徨う年末にはUrbie Greenがと、私の敬愛するTromboneの巨人が相次いで天に召された哀しく淋しい年でもあった。

年が明けて今は3月半ば。ここのところ新たな音楽体験があれこれ流れ込んできて、漸く私に救いをもたらそうとしてくれているということだろうか…。
だとしたら素直に喜び、希望を抱いて生きていきたい。

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2019年2月20日 (水)

音楽の救い  2019.2.20.

今も日々目に映る光景は
色褪せた灰色の世界なのですが
そんなぶっ壊れた私に
色彩を見出ださせてくれる音楽・演奏に出会えました


彼は Christpher Bill  @ YouTube 
(Sir Duke/ Stevie Wonder
)
一人四役 多重録音で聴かせてくれる彼の音楽は
もう最高!です

もちろん凄く巧いのですが

必ずしも「完璧ー!」ってタイプの演奏とは違います

でも どの演奏も楽曲に対するリスペクトと
愛情に満ちていて
キマってるフレーズも 魅力あふれる歌い方も
本当に素敵
楽しくって 楽しくって

まさにこれぞ音楽!

音楽とTromboneとを愛するハートが
ガンガン伝わってきて
私の心を癒してくれるのです

私の世界に色彩が戻ってくるとしたら
やはりそれは音楽がもたらしてくれるのでしょう



☆Christpher Bill 音源堂のオススメは以下です☆
理屈抜きに楽しめますので ぜひお聴きになってみて下さい

セプテンバー (アース・ウインド&ファイアー)

ペニー・レイン(ビートルズ)

私のお気に入り(J.J.ジョンソンVersion)

美女と野獣 メドレー

長い夜(シカゴ)

スター・ウォーズより”酒場のバンド”

オペラ座の怪人 

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2019年2月13日 (水)

海の肖像

Sea Portrait  -A Tone Painting
H. C. ラガッシー (Homer C. LaGassey 1902-1982)

※冒頭画像:歌川広重/富士三十六景「駿河薩タ之海上」

「この”音の絵”は海の見せるあらゆる姿を捉えている。瞑想するかの如く穏やかに静まった海、或いは猛威を振るう大嵐の海。 また暴風の吹き荒れる暗い夜の海、そして昇りゆく朝陽の希望に満ちた光に包まれた海を-。」
(出版元 Kjos社HPの楽曲解説より)

海のさまざまな姿、表情をごく描写的に絵画の如く音楽にまとめた作品とされる。もちろん映像的な要素も多分にあるのだが、海にまつわる思い出とその回想、そして海に対する愛着や畏敬-そういった情念的なものを描出する音楽としての側面が、私にはより強く感じられる。
そこに描かれた海は、たとえ如何に荒れ狂う姿をみせようとも、やはり最後は大らかに我々を包み込む超越した雄大な存在であり、神々しいまでの美しさを感じさせるものだ。「海の肖像」はそうした海への愛を発散している作品ではないだろうか。

地球の表面の7割を占める「海」-島国である我が日本はまさに海に恵まれ海とともにある国である。美しい景観や食の恵み、レジャーやスポーツの愉しみをもたらし、またさまざまな歴史的変革に繫がった航海の舞台である海は、我々に豊かさを与えてくれる。

しかし…時に海は人の命を奪い、理不尽に猛威を振るって船を呑み込み、また全てをなぎ倒しかっ攫う姿も現わす、洵に恐ろしい存在でもある。特に2011年の東日本大震災で、我々はその荒ぶる姿に戦慄し激しい恐怖に直面することとなった。
その被害に、海の恐怖に直面された方々は「海」にどのような想いを抱かれているだろうか。同様に海の怖さと日々戦っておられる漁業関係者や、マリンスポーツに挑みご本人や近親者が事故に遭われた方は果たして…。

そうしたことに想いを巡らしながらも、幼いころから海が近しい存在であった私は「海」が大好きだという意識を覚えて已まない。そんな私の心は「海の肖像」が顕す”海への親愛”に共鳴している。

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”音の絵”と作者が題したこの曲の世界へイメージを膨らませていただくべく、私の大好きな歌川広重(1797-1858)が描いた浮世絵の「海」をご紹介しておきたい。冒頭画像はあの葛飾北斎「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」とともに海を描いた傑作として並び賞される「富士三十六景・駿河薩タ之海上」である。
海をめぐる絶景はやはり広重にも感銘を与えたのであって、彼は日本全国を訪れ”広重ブルー”を駆使したさまざまな海の風景画を遺している。
※左から「五十三次名所図会・由井薩多嶺」「富士三十六景・房州保田海岸」「六十余州名所図絵・阿波 鳴門の風波」「六十余州名所図絵・常陸 鹿嶋太神宮」

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私は九州・大分県の臼杵という田舎に生まれ育った。高校卒業までを過ごしたそこは”前は海、後ろは山”の自然に恵まれた地であり、その海は都会と比べて実に美しかった。そしてTromboneと吹奏楽に出会うことになった我が中学校は、まさに海に繋がる河口に位置していたので、雨が降らぬ限り”海に向かって”ロングトーンをするのが日課であった。
今思えば何と贅沢なことだろうか。有難みは判っていなかったが、あの爽快感・開放感というものは間違いなく記憶している。

私にとって最も濃いイメージとなっている故郷の海の姿は、たびたび釣りを楽しみ、また学生時代に帰郷して海が見たくなるとミニバイクを飛ばして必ず行った臼杵港「白灯台」の波止から見た風景である。豊後水道に位置する臼杵の海は、瀬戸内の一角ということなのであろうが、太平洋や日本海とは違って実に穏やかな、心休まる海である。

堤防から海側にテトラポットがびっしり並ぶその隙間の穴釣りや、チョイ投げでのんびり楽しむ釣りは何とも楽しいものであった。尤も、技術も知識も欠けた子供の遊び釣りなので大した釣果などなかったのだが…。
何より穏やかに煌めく海の眺めと、心地良い風が大好きだった。四国・八幡浜港と臼杵港を2時間半ほどで結ぶ九四航路のフェリーが時折やってくるのだが、そのダイナミックな姿を見るのも好きだった。

「海は、いい!」
私自身は強いノスタルジーとともに、端的にそう思うの
である。
しかしあの大好きだった臼杵の海も- もはや四半世紀以上見ていない。


【画像出典】
(上)臼杵黒島海水浴場:ウォーカープラス/臼杵市産業観光課
(下)臼杵港白灯台:kiyoのチャンネル

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1956年出版の吹奏楽オリジナル作品であり、1960-70年代に人気を博した文字通り”往年の名曲”である。全日本吹奏楽コンクールでも1963年から1978年にかけて8団体が自由曲に採り上げ、うち東邦高校(1963年)・蒲郡市吹奏楽団(1969年)は見事全国優勝(第1位)を果たした。

作曲者ホマー・ラガッシーはアメリカの作曲家で、ミシガン州デトロイトのキャス工業高校で教鞭を執り、同地域に於いて永年音楽教育に携わった人物である。他に吹奏楽作品として「ボカ・トッカータ (Boca Toccata)」「セコイア (Sequoia)」が遺されている。

※キャス工業高校が1952~1955年に開催した演奏会のライヴCDに、「海の肖像」の作曲者自身による初演が収録されているとの記録がある。従って実際の作曲年は1952~1955年の間ということになろう。 →
Cass Technical High School concerts

「海の肖像」もそうであるが、ラガッシーの作品にはその美しさを賞賛する声が多く寄せられている。特にアメリカのピアニスト兼作曲家ケネス・クーン(Kenneth A. Kuhn)は、「セコイアは美しい曲で、いつももう一度聴きたいと思う。ああ、なのに商業録音が存在しないのだ!」と嘆き、何とオーケストラル・シンセイザーによって自ら音源を作成、自身のHPならびにYou Tubeにて公開しているほどの入れ込みようなのである。

【出典・参考】  ケネス・クーンHP


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ラガッシーのイメージした「海」は如何なるものだろうか。
それは日本人の私とはまた全然違ったものであろう。しかしたとえ生まれ育った国が違い、思い描く海のイメージが違ったとしても、共通しているもの・共感できるものもまたたくさんあることを、この楽曲から確信することができる。
魅力的な2つの主要旋律と、その巧みな変容によって鮮やかなコントラストと多彩さを生み出しており、また楽曲としての構成感にも優れた名曲である。

冒頭(4/4拍子 Lento e Maestoso)6小節に亘り、応答で構成する息の長いフレーズがダイナミクスの大きな起伏をもって奏でられ、最初の海の情景が提示される。雄大な波濤の映像に続いて、すうっと穏やかな潮騒へ転じるさまが描かれる、印象的な序奏部である。

続いて3/4拍子 Andante sostenuto に転じ、クラリネットの美しいシャリュモーの音色を生かした抒情的な歌が始まる。この第1主題からして実に美しい。「海の肖像」が真に美的な作品であることを象徴するものである。
センチメンタル極まるこの旋律はややリズミックさを加えたpoco piu mossoで展開し高揚したのち、緩かに戻って繰返される。フレーズの節目に現れる幻想的な和音がまたロマンチックな魅力を放っているのだ。

さざ波のようなブリッジを挟み、ややテンポを速めたAndante con moto espressivoではOboeとHornのデュエットが歌いだす。この第2主題がいっそう可憐でセンシティヴな雰囲気に溢れ、どうしようもなく素敵なのである。
これが木管のアンサンブルに移りもう一度歌い上げられたのち、急にふっと表情が変わる。不安げな応答が速まる動悸のように高まってゆくその先に見えたのは、力強く押し寄せ巌に衝って大らかに砕け散る豪快な波の姿であろうか-全合奏ff のスペクタクルで壮大な音楽となって最初のクライマックスだ。

落着きを取戻し、第2主題が今度は逞しく繰返し歌われた後は舞曲風の展開部へと入る。このAllegro(♩=132)はppに始まり徐々にしかし確実に活気を帯びてくゆく。Flute & Clarinetのリズミックな伴奏に導かれ、それに乗って伸びやかな旋律がConetやOboe (+ Alto Cl.、A.Sax、T.Sax、Trb.)に現れ、実に愉し気に歌うのである。
より律動感を濃くしダイナミクスも高めた楽句を挟み、舞曲は再び木管群によって伸びやかな旋律が歌われて亢進、全合奏のコードに続いて鮮烈なCornetのSoliへとなだれ込んでいく。
これが高らかに繰り返され2度目のクライマックスを形成した後、ミステリアスなAndante Cantabilleのブリッジとなって音楽は穏やかで深遠なムードを取り戻す。こうした目くるめく一連の展開には、まさに「海」のさまざまな表情が感じられることだろう。

鎮まった海を表す第1主題の再現-(4/4拍子 Lento e tranquillio ♩=63-66)メロディのカウンターとなるFlute・Piccoloの何という密やかで高貴な美しさ…!
艶やかな真珠の輝きのようで洵に感動的である。

そして第1主題は本来の3/4拍子に回帰し、テンポを速めつつ呼び合い高揚して終局のクライマックスへと向かう。ここでは4/4拍子 Lento fff で奏される拡大した旋律がこの上なくスケールの大きな音楽となって聴くものを包み込む。そして最後は晴れやかな全合奏のコードが、力強く奏者と聴衆の心に満ち満ちて全曲を締めくくるのである。

♪♪♪

この名曲は現在忘れ去られた状態になっているが、これは絶対におかしい!ぜひ再評価されるべき作品である。
音源も極めて少ない。奥行きの深いこの曲だけに、再評価が進み演奏機会が増えることで、また新たな好演の録音が登場することを、併せて願わずにはいられない。

木村 吉宏cond.
広島ウインド・オーケストラ

永く待望されていたプロ楽団によるセッション録音。自然なアゴーギグで丁寧に歌い、とても品のある演奏でこの曲の魅力を率直に伝えてくれる。全体の構成感にも優れた秀演である。


市岡 史郎cond.
東京佼成ウインドオーケストラ(Live)

同楽団第19回定期演奏会(1976年)のライヴ演奏であり、記念誌「東京佼成ウインドオーケストラの40年」の付録CDに収録。各部分部分の雰囲気が積極的に表現され、コントラスト豊かな演奏となっている。

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2018年12月25日 (火)

Desperate 2018.12.25.

イゴール・ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」…私は本来のバレエ版より「のだめカンタービレ」でその存在を知った、ピアノ独奏版「ペトルーシュカによる三楽章」の方が好きです。

マウリツィオ・ポリーニの名盤を何度も何度も聴き、どんどんこの曲が大好きになりました。
そしてこの曲は私にとって大切な、夢のような想い出の曲でもあるのです。

▼▼▼

昨夜、ぼんやりと You Tubeで
「のだめカンタービレ」アニメ版を視ていたら、偶然マラドーナ・ピアノコンクールの場面となり、この曲が流れてきました。

涙が溢れて、もうとめどなく溢れて

…嗚咽をこらえられませんでした。
惨めなペトルーシュカに、私の姿が重なって-
まさか大好きなこの曲がこんなにも私の心を引き裂き、悲しく感じられるようになるなんて!



全曲を締めくくる「謝肉祭」の残忍で鮮烈なラストは、哀れな道化師ペトルーシュカの最期を表現しています。

刺され、叩きつけられて息絶えた-
それはまさに 今の私の心 そのものです

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2018年5月 4日 (金)

序奏とアレグロ (酒井 格)

Introduction and Allegro
酒井 格 (Itaru Sakai 1970- )


当時高校生であった作曲者・酒井 格が、何とあの「たなばた」以前に作曲した金管五重奏曲(編成:Trp.×2, Horn, Trombone, Tuba)である。1986年の作曲後、初演までに永く時間を要し2000年夏に漸く実演されたという経緯を持つ。
極めて難曲との評判が聞こえていたし、「序奏とアレグロ」という標題から変拍子を駆使した現代曲をイメージ(私世代の吹奏楽人固有の”刷り込み”だが…^^;)して、酒井 格もそんな曲を書いていたのか-などと勝手に想像を膨らませていたのだが- いざ聴いてみたらこれも酒井ワールド全開のハッピーな楽曲だった!

♪♪♪

この「序奏とアレグロ」は、あるブラスアンサンブルへのオマージュを込めて創られている。
「この作品は1986年のある日、NHK-FMで放送された、「上野の森ブラスアンサンブル」の素晴らしい演奏に感銘を受け書いたものです。その時に放送されていた織田英子さんの作品「金管五重奏曲」は今まで私が知らなかった金管楽器の可能性を駆使した作品。同じく織田英子さんの編曲した「聖者の行進」のとても気の利いた楽しいアレンジなど、数多くの影響を受けています。その他、作曲当時親しんでいた吹奏楽作品の影響も感じられるでしょう。」
(スコア所載の作曲者コメント)

上野の森ブラス(旧称:上野の森ブラスアンサンブル/略称:モリキン)は1973年に当時東京芸術大学在学中のメンバーにより結成、現在のメンバーも1979年からという、現存する”日本最古のブラスアンサンブル”(上野の森ブラスHP=現在は閉鎖 より)である。
Trumpet 曾我部清典 織田準一、Horn 澤敦、Trombone 花坂義孝、Tuba 杉山淳 というメンバーの皆さんは、常任指揮者をお願いした花坂師匠をはじめ、私が学生時代に所属した大学バンドの指導陣として丸ごとお世話になった先生方である。その縁で親しくさせていただき、上野の森ブラスのコンサートの聴衆も我が大学バンドのメンバーが一大勢力であった。(^^)

 

華麗なテクニックと優れた音色は当然として、音楽性溢れる表現と絶妙に息の合ったアンサンブル、音楽の楽しさを自由自在に表すそのステージは「さすが」の一言に尽きる。さらに織田英子の書下ろしオリジナルアレンジによる個性的で魅力に満ちた楽曲もこのアンサンブルの強力な武器である。

ルネサンス期の古楽に始まるクラシック音楽はもちろん、世界各地の民謡、本格的なジャズやポピュラーソングに至るまで扱うジャンルは実に幅広く、それぞれの愉しさを尽くす-これこそが「上野の森ブラス」の奏でる音楽の真骨頂だろう。
いち早くジブリ映画音楽もレパートリーに取入れていたし、コンサートでは衝撃極まるTubaの超絶ベースラインによる本格的ジャズの「チュニジアの夜」も忘れられないし、かと思うとプログラムに載っていない「矢切の渡し」ではオーバーアクション&存分に”こぶし”を回したりの大サービスも…!(^^)
「中世のマドリガルとキャロル」「12の英雄的行進曲(テレマン)」「中南米のフォルクローレ」「日本民謡組曲」「イエスタデイ(ビートルズ)」 -斬新な楽曲と心躍る演奏は今も私の記憶にありありと甦る。聴衆を楽しませる想いが充満したそのパフォーマンスは、いつだって音楽の喜びへ存分に浸らせてくれるのだ。

そして、最大の特長は全曲を「暗譜立奏」すること!
1996年にはレパートリー101曲を全て暗譜で演奏するという前代未聞の”オールリクエストコンサート”を敢行、当然私も拝聴に参上したが、大いに盛り上がった!
プログラムには101の曲目リストが掲載されており、客席にゴムボールを投げ込んで受け取った人にリストから任意で曲を選んでもらい、直ちに演奏・進行するのである。それを実際全て暗譜で演奏してしまうのも見事だし、構成自体が出たとこ勝負というあり得ないコンサートを滞りなく、この上なく楽しく進行させてしまうTuba杉山氏のMCも凄かった!
たった5人のアンサンブルなのに、あの東京文化会館(@上野)大ホールに響きを満たし何の違和感も生じさせぬ「上野の森ブラス」の演奏には、まさに感嘆するばかりなのであった。

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そんな「上野の森ブラス」の演奏を耳にした当時まだ高校生の酒井 格はこんな感銘を抱いたとか。
「TrumpetやTromboneのHigh Toneはもちろんのこと、Hornに音程が存在する!そして何よりも驚いたのはTubaの機動性です。普段はマーチのベースを刻むくらい。たまにTromboneとユニゾンでのメロディー、そして「恋のカーニバル(岩井直溥編)」に至っては、あれがTubaの限界と認識していたのですが、この時に演奏されていた織田英子作曲「金管五重奏曲」を聴いて、そのTubaの圧倒的なパフォーマンスには度肝を抜かれてしまったのです。」
(作曲者HPより)
          ※画像:織田英子作曲「金管五重奏曲」収録CD、ならびに「その頃」の上野の森ブラス

そんな「上野の森ブラス」を意識しつつ、作曲者がそれまでの金管楽器の認識を振り払うように、或いは何かに挑戦するように書いたというのがこの「序奏とアレグロ」だ。14年が経過し(一部和声を直したものの)原型のままに初演を迎えたわけだが、結果としてプロの初演奏者も認める難曲となったと同時に、「金管楽器の暖かいサウンドと可能性を追求した、素晴らしい曲です。」とのコメントを得たとのことである。
※NHK交響楽団首席Trombone奏者 新田幹男氏

技術面そのものとしては他に一層難しい楽曲も多数あるはずだが、この曲を実際に吹いてみて何より痛感するのは…「休みがない」 !!!
あったかくて底抜けに明るく、”楽しーいっ♪”って音楽なのに、音域やダイナミクス、ニュアンスの目まぐるしい変化が「休みなく」襲って(?)くる。一見した譜面(フヅラ)よりも一層エグい曲となっているのは紛れもない事実なのだ。

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標題通り、Moderatoの序奏部に続いて、アンカーと展開部が交互に織上げられるAllegroの主部となり、Piu mossoのコーダで締めくくられるという明快な構成の、陽気な音楽である。輝きを放つ魅力的な旋律やパッセージが随所にちりばめられているのは、まさに酒井 格ならではと云って良いだろう。

序奏部は明らかにアルフレッド・リードの名作「アルメニアン・ダンスPartI」の影響を受けているが、現れる旋律は民俗的ではなくモダンでリリカル、そして若々しい印象を与える音楽となっている。
冒頭、32分音符に始まるファンファーレ(冒頭画像)とその反復はまさに「アルメニアン・ダンスPartI」の冒頭を彷彿とさせるもの。やがて優しく感傷的な旋律がTromboneに現れ、
そのムードがHorn-Trumpetへと移りゆく。冒頭部をTubaが再現するころには大変ファンタジックな響きが聴くものを包み込むのであり、ぜひ繊細な弱奏が聴きたいところである

静まった音楽がポーンと弾けるようにAllegroに入ると、
一転して快活で陽気、そして洒脱を極めた楽想となる。ここからはTubaによる実に機動的なベースラインが現れ、その縦横無尽に”飛び回る”さまが聴きものである。
前述の通り、このAllegroでは最初に現れるリズミックな旋律がアンカーとなり、
それと交互に展開部が織り込まれて曲が進んでいくのである。

その展開部ではTromboneがそのキャラクターや特性を活かしてまさに大活躍だ!
アンカー旋律が戻り一旦落着いた後、放射状に高揚してPiu mossoに突入すると
音楽は足取りを早め活気をさらに増しつつ、爽快でハッピーな聴後感に包まれる終結へと一心に向かってゆく。

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音源としては
ブラスアンサンブル・ブロウ
(brass ensemble BLOW)

によるセッション録音を。この曲の特性、愉しさを伝えてくれる好演であり、移り変わる曲想のニュアンスも適切に表現されているのが大変好もしい。

さあ、あとはそのオマージュから発したこの作品が、本家「上野の森ブラス」で演奏されるのを待ち望むだけ。当たり前だがこの「序奏とアレグロ」という音楽は”暗譜立奏”で演じられる「上野の森ブラス」の世界そのものなのだから!!!

先生方に実演を期待しつつ、私は自分でも「序奏とアレグロ」を演奏してみたいと切望している。この曲はTromboneを旋律担当にセッティングしてあり、実にやりがいのある楽しい譜面だし、心を入れ替え(?)Tromboneの練習に励み直して5年目、漸くこの曲を演奏可能になったという手応えを得ているので…。
演奏するなら、当然”暗譜立奏”やるしかない!
\(^o^)/

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2018年1月10日 (水)

ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ

La forme de chaque amour change comme le Kaleidoscope
天野
 正道 (Masamicz Amano 1957-)

人類愛、親子の愛、男女の愛、屈折した愛、普遍的な愛、などなど「愛」には色々な形があるのでしょう。その、それぞれの愛のかたちが万華鏡のごとく変化する事もあるのかもしれません。この曲はそういった「愛の形」をテーマにして書いた曲です。曲の雰囲気も万華鏡のように変化していく様に構成されています。」
(作曲者コメントより)

私自身、発表されてまだ間もない2004年に本作品の演奏に取り組んだ。”万華鏡のよう”と作曲者自身がコメントしたこの曲だが魅力あふれる旋律や楽句、サウンドの宝庫であり、またそれが鏤められたさまはまさに万華鏡の如し。当時から既に私の心を捉えていたこの曲であるが、後年その魅力をより一層深く刻みつけられる演奏と出会う。
それは2015年全日本吹奏楽コンクールでの米田真一cond.玉名女子高校の演奏である。前年「森の贈り物」(酒井 格)の演奏を聴きこの団体の虜となっていた私は、翌年のこの演奏で更に一層魅了されることとなった。
美しい音色、高いレベルにあるテクニック、豊潤でありそれだけでも感動的と云えるサウンド、そしてメリハリの効いたテンポ設定と鮮やかなコントラスト-このバンドはもう本当に素晴らしい。
しかし、このバンドの最大の魅力は豊かな”歌心”だ。ソロプレイヤーだけではない、バンド全体が実によく歌う。
防菌ゴーグル 保護メガネそしてこの演奏などは、打楽器セクションまでもが(実はこれが打楽器セクションのあるべき姿ではあるのだが、接することは稀)バンドに壮大な歌を歌わせるために見事に機能しているのであって、まさに鳥肌の立つ感動である。”歌え、思う存分歌え”という内面の叫びが聞こえてくるような、最高度の情緒に溢れた演奏、”歌”の素晴らしさ、尊さに浸らせてくれる名演。そしてこの「ラ・フォルム-」が如何に多くの素敵な歌を内包した音楽であるか感じ入らせてくれる。
終盤のau Mouvetではたっぷりと歌い上げる主旋律と対旋律、更に伴奏リズムといった全てが極めて立体的に絡み合い感動的なクライマックスを築いており、まさに圧巻だ。

♪♪♪


作曲者「天野 正道」の名に初めて接したのは中学生時代、秋田南高校の全日本吹奏楽コンク-ル自由曲のアレンジャーとしてである。「ペトルーシュカ」「春の祭典」、そして現代の邦人作品…。私の知らない音楽の世界を次々と教えてくれた。
前衛的なもの、日本的なもの、映画音楽的なもの、フランス的なものとその作風は多岐に亘り、変幻自在。今や、天野作品の吹奏楽レパートリーに占めるウエイトは極めて大きいものがある。
本作はフランス語の長い題名となっているが、「愛は万華鏡のように」といった”邦題”を作曲者は望んでいない。「それぞれの愛のかたちは万華鏡の如く移り変わる」というスコアにも記された題名の意味は理解するとして、モーリス・ラヴェルやジャック・イベールといったフランス近代の作曲家たちへの強いオマージュも感じさせる本作品にはやはりフランス語表題が似つかわしいのだ。


ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープが作曲されたのは2003年。”カレイドスコープ”という金管五重奏曲と”ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール”というクラリネット八重奏曲を合体させるというアイディアがその発端という。
2016年には本作品の委嘱者から新たな”カスタマイズ”を求められ、それが”ヴァージョン・リミックス・パァ・ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ”という再創造作品を生んだ。こちらは冒頭からより激しい熱情と強靭さを感じさせる音楽であり、また(フランスというより)ロシア的な印象を受けるものとなっている。

♪♪♪

全体を見ると、序奏-緩舒パートI-行進曲風-緩舒パートII-変拍子バッカナール風-緩舒再現部-行進曲風再現部-コーダという構成で、テンポやダイナミクス、曲想が次々と移りゆく極めて多彩な楽曲となっている。
勇壮な行進曲風や、快速でエキサイティングな曲想も織り込んで鮮烈なコントラストを描く美点もさることながら、この曲はソロイスティックな楽句を随所に配した美しく切なく思いっきりロマンティックな緩舒部分の魅力がとにかく圧倒的である。「愛」という大きなテーマを表現するに相応しい内容を備えた傑作と云って良いだろう。

豊かなサウンドを持ち、人肌の温かみを感じる美しくファンタジックな序奏部(冒頭画像参照)は、何故かミステリアスでもある。そして緩やかな高揚が弾けたそこに妖精が現れたかのような玲瓏なFlute Solo-可憐なその美しさに思わず息を呑まずにいられない。
その瑞々しさに茫然としていると、更にOboeがロマンティックを極めた旋律を提示するのである。それは透明感のある美しさを湛えつつ、色っぽさを隠さずにはいない。
厚みを増しふくよかに繰返し歌われたこの最初の愛の旋律にSaxophoneのアンサンブルが続く。
この楽器たちの持つ美しい饒舌が遺憾なく発揮されるさまが聴きものであり、ラヴェルの名作「弦楽四重奏曲」を彷彿とさせる世界が拡がっていくのだ。その魅惑はより幻想的なムードを湛えつつ鎮まりゆく。

そして突如、次々と点灯するランプの如き高音楽器のベルトーンに呼び覚まされ、曲は勇壮な行進曲の楽想へと転じる。
ファンファーレ風の金管楽器の華々しい楽句に始まり、誇り高く堂々たる足取りで歩みを進める音楽には気圧される勢いがある。
これが静まると、音楽はより幻想的なムードへと深みに降りていく。新たな愛の旋律はそれまでにも増して艶っぽいものとなり、
それに続く旋律もまた実に蠱惑的な美しさに溢れ、いよいよ陶酔感を充満させるのである。
蚊取り線香入れ 蚊取り線香ホルダー 蚊取り線香 ホルダー 鉄製 蚊取り線香立て 蚊遣器 蚊取り器 吊り下げ レトロ 蚊遣り 手提げ 蓋付き 室内 室外 アウトドアにも適用 ステンレス鋼製(古銅)やがてHarpの調べとともに現れる旋律の深遠な美しさはどうだろう。叶わぬ愛のかきむしるような、しかし静かな切なさを感じさせずにいないのではないだろうか。(後にHarpの伴奏によりファゴット・ソロでこれが繰返されたとき、その印象は一層強まることとなる。)
更に木管楽器の繊細な美しさに満ちた、或いは遠いノスタルジーを想起させて已まないソロやソリが繰り返され、
より優美さを増したしなやかなSaxophoneクインテットも曲を彩っていく。
この一連の夢幻的な曲想と、それゆえに儚い美しさは本作品の示す最大の魅力であろう。

やがて俄かに音楽は不安げな表情を示し、打楽器も加わった煽情的なブリッジを経て快速で変拍子のバッカナールへと突入する。
ここでは特徴的なリズムのみならず、生命感に溢れた旋律が際立って印象的である。
その中で諧謔的な低音の旋律も現れ、これが楽曲に変化を生んでいる。
二度繰り返されたこのバッカナールは急ブレーキの如き減速を経て、遂に全曲最大のクライマックスを迎える。そこには文字通り「愛」を象徴する壮大で情熱的な歌が謳い上げられている。
各声部、全セクションが一体となって創り上げられたその世界はまるで洪水のように聴くものをたっぷりとした暖かいサウンドともに攫っていくだろう。ここではその心地良さに身を任せられる豊かな音が欲しい。

運命的なHorn(+Flugelhorn, T.Sax, A.Cl.)の楽句に導かれて行進曲の楽想が再現され、その緩まっていくテンポとともに華々しく鐘が鳴り響いて重厚かつ濃厚なコーダへ突入、最後はCのコードがオルガン・サウンドで轟きわたり大団円を迎える。

♪♪♪

既に推奨した玉名女子高以外にも全日本吹奏楽コンクール(2017年度終了時点)では5団体に採り上げられているが、ノーカット全曲版の音源はごく限られる。

佐川 聖二cond. 創価グロリア吹奏楽団(Live)
委嘱者による2003年当時の全曲録音。Live録音であり譜面を完璧に音にし切ったとまでは言えないが好演である。特に最後のコードのオルガン・サウンドは洵に見事。このレベルに達するのはなかなかできないこと。

天野 正道cond. 土気シビックウインドオーケストラ
2016年の録音で、”ヴァージョン・リミックス・パァ・ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ”を同時収録。作曲者自身の指揮によるものであり、その意図を端的に伝える引き締まった好演。Fluteのソロは殊の外美しい。


♪♪♪

”愛には色々な形があり、そのそれぞれの愛のかたちが万華鏡のごとく変わる”
-本作品に寄せた作曲者の言葉が、美しいこの楽曲とともに私の心に幾度も去来する。その意味をしみじみと噛み締める齢に、私はなったのだ。

(Originally Issued on 2006.12.13./Overall Revised on 2018.1.10.)

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2017年12月17日 (日)

2018年へ向けて 2017.12.17.

写真は我が「シルバーランド」の愛器たち!

Tenor : M. Rath R3-N Satin "Violetta"
TenorBass : Courtois AC420MBOST "Sapphire"
Bass : M. Rath R9-N "Franz"


いや、我ながら実に美しい楽器たちです☆

♪♪♪

練習に打込み、相応に進歩のあった2017年ではありましたが当然課題は残っており、これを打破して更にレベルアップしなければなりません。

1. 音域拡大(ハイトーン)の継続
2. 音程改善(ソルフェージュ)の徹底
3. アクセント/快速楽句の奏法改革


特に3. は急務で、各音価に見合った充分な響きを保ちつつ、明確に発奏するということが、常にできるようにならなくてはいけません。
40年間できてこなかったことをイメージ改革から始め、反復練習で自分に浸透定着させる-。
しっかりと取り組んでいきます。

演奏活動も敢えて絞り込みました。一日一日を大切にして愛する音楽に接していきたいと思っています。

♪♪♪

ところで、昨日は所属楽団の常任指揮者、S先生による年内最終の合奏練習でした。練習終了後の酒席にはS先生にもご参加いただきましたので、
「今年は何とか”蛾”には成れたと思いますので、来年は”蝶”に成れるよう頑張ります。」と申上げたところ、
「確かに良くなった。でも”蝶”になんか成らなくていいから、お前は”モスラ”を目指せ!」
という励ましの言葉をいただきました。
…というわけで、2018年は「モスラ」に成れるよう精進します!(^^)

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2017年10月25日 (水)

王女、光臨! 2017.10.25.

我がシルバーランドに新たな
プリンセスが光臨しました!
Michael Rath R3-N Satin です!

期待通りの素晴らしい楽器で
感動しました☆
そして美麗なその姿…!

きっと私をプレイヤーとして成長
させてくれると信じています。

二代目”Violetta” -先代の分も
愛情注いで大事にします♪

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2017年9月 6日 (水)

猫組曲 (「4匹の猫」「もう3匹の猫」)


Cat Suite
I. Kraken   II. Black Sam   III. Borage   IV. Mr. Jums


Three More Cats
I. Flora   II. Tubby Mousetrouser   III. Homepride


クリス・ヘイゼル ( Chris Hazell  1948- )

♪♪♪

「4匹の猫」(Cat Suite)はブラスアンサンブルの金字塔、フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル(Philip Jones Brass Ensemble/PJBE)の委嘱作品であり、特に彼らのアンコール・ピースとして大変な人気を博していた。
「ミスター・ジャムズ」「ブラック・サム」「バーリッジ」の3曲がまず作曲され(”3匹の猫”(Three Brass Cats)として出版)、追って「クラーケン」が”もう1匹の猫”(Another Cat)として作曲・出版されたのだが、現在は作曲者ヘイゼル自身がここまでの4曲をまとめて「4匹の猫」と認識していることから、本稿でもこれに従う。
一方、「もう3匹の猫」(Three More Cats)はPJBEの後継として活動したロンドン・ブラス(London Brass Virtuosi)の委嘱作品。
これらから成る「猫組曲」は、ブラスアンサンブルのレパートリーとして最大のヒット作の一つとなったのだった。

作曲者クリス・ヘイゼルはDECCAレーベルにてマエストロたちが指揮する名録音を数多く世に送り出す録音プロデューサーとして活躍の傍ら、映像関連音楽やブラスアンサンブルに優れた作品を生み出している作曲家である。ブラスサンブル作品としては「ゴスペル・ホール」なども人気が高い。

彼自身はこの「猫組曲」について
「この曲のインスピレーションを得たとき、私は4匹の猫と暮らしていた。4匹が全く違った個性を持っていたので、それぞれの猫にちなんだ作品を書くというのはいいアイディアだと思った。また「もう3匹の猫」については(「4匹の猫」から随分時間が経ってしまったが)1つを除いて、その後新たに我が家へやってきた猫にちなんだ作品である。」
と述べている。
それはどの曲も魅力的な旋律に満ち、金管楽器の音色や機能を活かす一方、ジャジーな或いはゴスペル調の作風で親しみやすく、そのうえ実に品があってシャレている!奏者も聴衆も理屈抜きに楽しめる素敵な作品なのである。

【出典・参考】
Brass Wind Publications 社 HP
”BRASS CATS”(KLAVIER K11129) CDリーフレット解説
(以降のヘイゼルによる解説も同出典)


♪♪♪

それではさらにヘイゼル自身の解説(「 」)を引きながら、各曲を見ていきたい。

■4匹の猫

I.クラーケン (Kraken ♀)
「”巨大な”伝説上の海獣の名前から、ジョークを込めて命名。捨て猫だったクラーケンは私の片方の手のひらで丸まって眠るほど小さかったのだが…。
成猫となっても小さいままだったが、他の猫が如何に大きくとも、クラーケンは家中の猫のボスであり、とても長生きして20歳まで生きた。クラーケンの気取った鳴き声は自らがボスであることを誇示するものであり、そして小さいながらもその威を示す斑点のある尻尾が彼女の特徴なのだ。
そこでクラーケンを表すこの曲にはフーガを入れることにした。”フーガ”の語源はラテン語の”尻尾”だから…。」


私自身、この曲を聴いてもクラーケンが小柄な牝猫とは想像が及ばず大いにびっくりした。とても気取って飄々と歩き回るイメージは実物通りだが、まさか「姐御様」だったとは…!
Tubaのベース音のオクターブ上でBass Tromboneがビートを刻む斬新なオープニング。そこに高らかなTromboneのモチーフ提示が降ってくる。(上画像参照)
ほどなくジャジーでノリノリな旋律が流れ出し、
おしゃまで気取ったクラーケンが闊歩し出すと、もう堪らなく陽気になれる。(途中、ひと時挿まれるたおやかなはフレーズは、クラーケンにも乙女な一面があるってことかしらん?)
場面転換して始まるフーガはこの曲の”華”-あくまで小品であるはずの楽曲を実に奥行きのあるものに仕立てている。
そして最終盤のクライマックスは、もうご機嫌で一層得意げなクラーケンの大闊歩だ!
一瞬静まった後のエンディングは”very cheekily (とっても生意気に)”と指示のあるTrumpetのフレーズと、それに続く全合奏の鮮烈なショットで締めくくられる。

II.ブラック・サム (Black Sam ♂)
「雨の降る寒い日曜の朝、窓の外に座ってニャーニャーわめいていたのを家に入れてやったのがこのブラック・サム。これまで聞いたことのある中で一番大きくかつしゃがれた声でのどを鳴らす猫だった。それはまるでゴスペルシンガーがお気に入りの霊歌に没頭しているかのよう。私が抱っこするとブラック・サムはこの”霊歌”を奏で、やがてそれは彼の性格を反映してか、だんだん気だるいスウィングに変っていくのだ。」

ミュートを装着したTrumpet・Tromboneのコラール(上画像参照)に始まり、3拍子スウィングの主部に入る。何と暖かな旋律だろうか-カウンターに入るTubaのフレーズもリズミックでいて包み込むような暖かさがあるのである。
この旋律が移ろい、作曲者コメント通り気だるく”揺れて”いくさまが洵に心地よい。この曲から感じるのは、やはり「雨」のムードでもあると思う。
ただ決してそれだけではなく、意を決したようにPiccolo Trumpetが現れるやダイナミックなクライマックスを形成、楽曲に一本芯が通るのだ。

III.バーリッジ (Borage ♂)
「バーリッジは4匹の中で一番最後に我が家にやってきた野良猫。若く、エネルギーに満ち溢れていて、家の中や庭を狂ったように駆け回っているというのが日課だった。彼の名は彼がよく潜んでいた庭の植物に由来する。可愛そうにバーリッジの寿命はとても短く、車に轢かれて死んでしまった。」

※Borage :和名「ルリジサ」 星の形をした青い花を咲かせる食用/薬用ハーブ

Bass TromboneがLowC音を”轟かせて”始まる鮮烈なオープニング!そしてこの冒頭からずっとBass Tromboneがリードしていく -こんな楽曲はなかなかない。全曲の中で最もジャズの色彩が濃く、そしてエネルギッシュな音楽だ。
強奏と弱奏のコントラスト、スリリングなリズムとテンションの高まり、音色のスピード感。聴いているとそのカッコよさにどんどん胸がドキドキしてくるのを禁じ得ない。
繰り返されるフレーズがまた更にギアを上げて昂ぶり、応酬しスケールを拡げていくさまに圧倒されるばかり。最後は束の間の鎮静に続き、Hornの咆哮に導かれた激烈なシンコペーションのフレーズで閉じられる。

VI.ミスター・ジャムズ (Mr. Jums ♂)
「この猫も元は野良猫で、やせっぽちでズタボロの、とてつもなくひどい状態でどこからともなく現れ、クラーケンからエサを盗もうとしていた。こんな彼は信用がなく、数ヶ月は家に入れてやらなかった。野良猫時代には毛の色に因んで”ジンジャー”と呼んでいたのだが、それがいつしか”ジャンブル”に変わり、最終的に”ミスター・ジャムズ”に落ち着いた。そんな荒んだ過去を持つ猫だが、我が家の猫たちの中で一番心優しいのはこのミスター・ジャムズなのだった。この曲はその優しさを描こうとしたものである。
尚、この曲は4曲の中でも一番人気がある。そこで私はロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで開催されたPJBEのさよならコンサートのために、この”ミスター・ジャムズ(Mr.Jums)”をもじった名の曲を提供した。ブラスアンサンブルの有名なレパートリー30曲を織り込んだものだったのだが、その曲名こそは…
”ミスター・ジョーンズ(Mr.Jones)”であった!」


出会いの印象こそ良くなかったようだが、作曲者ヘイゼルが一番好きな猫はこのミスター・ジャムズだったのだろう。その想いが溶け込んでいるように感じられる、まさに”優しさ”の充満した楽曲である。
穏やかに始まる前奏部では包容力に満ちたBass Tromboneのソロも現れ、続くファンタジックなハーモニーが印象的。フリューゲルホーンの奏でる旋律はこの上なく抒情に溢れていて、心に迫る。
輝かしく光を放つ終結部はそれまでの曲想とのコントラストも鮮やか。ここで切り込んでくるPiccolo Trumpetの華麗な音色はそれを一層強めている。最後はオルガン・サウンドの如き重厚なコードが響きわたりエンディングとなる。


■もう3匹の猫

I.フローラ (Flora ♀)
「フローラは仔猫の時分にゴミ箱の中で見つけた。バーリッジと同じで、彼女は走り回るのが何よりも好き。かと思うと急に止まって眠ってしまい、また飛び起きて走り回るというのを繰り返す。彼女を捜すとたいていは庭の茂みの中にいた。フローラ(花の女神)という名前はそのことにちなんでいる。」


冒頭のリズムは快活なフローラの性格を象徴したものだろう。Piccolo Trumpetの奏でる跳ねまわるような旋律は活気に満ち、一層その印象を強くさせる。
そして現れるTrumpetの夢見るようなスィートな旋律 -私は全7曲を通じてこの旋律が一番好き…!
大きなフレーズで歌われるその抒情には、思わず抱きしめたくなるような衝動に駆られるのだ。
終結部ではこの2つの旋律がクロスオーヴァーして音楽を高揚させていく。

II. タビー・マウストラウザー (Tubby Mousetrouser ♂)
「レコードのディーラーをやっている私の友人の猫。この友人はPJBEのとてつもないファンで「4匹の猫」が大好き。そんな彼に敬意を表して、彼の猫をこの「もう3匹の猫」に入れることにした。
名前の由来はよく判らない。「タビー」と「マウス」は直ぐ判るけど、「トラウザー」は?眠ることと食べることが何より大好きな猫なのだが…。」


この曲だけはヘイゼルの飼い猫ではない。”Tubby”とは”桶のような、ずんぐりした”という意味だから、結構なおデブちゃんなのだろう。^^)
終始幻想的で夢うつつなムードの楽曲は「眠ることと食べることが何より大好き」なのんびりした性格の猫を描写していよう。それにしても、この曲の旋律も実に美しく魅力的である。
たびたび現れる鐘の音を模した呼びかけるようなフレーズは、いつも寝惚け眼のこの猫に愛情をもって接する飼い主の声だろうか。

III.ホームプライド (Homepride ♂)
「巨大で、薄いジンジャー色をした猫。ある日の早朝、私の家の台所で勝手にエサを物色しているのを見つけたのが最初。その時、私は小麦粉か何かをかぶったミスター・ジャムズがいるのだとばかり思ったのだが…。この猫が完全に我が家の猫になった後も、「小麦粉」の印象は残っていたので、イギリスの有名な小麦粉とパンのブランドからとって”ホームプライド”と名付けた。このホームプライドを従わせることができたのは、やはりクラーケンだけだった。」


”ホームプライド”はイギリスのナショナル・ブランドで、その小麦粉のパッケージは左画像の通り。それにしても…つくづく”クラーケン姐さん畏るべし!”である。^^)
※ホームプライド社 HP

この曲はフィナーレを飾るにふさわしい華やかで活気あふれる楽曲であり、16ビートを刻むドラムセットやタンバリンも加わって、全曲中最もポップで生きいきとした曲想を演出している。
中間部には少々憂いを含む洒落たジャジーな旋律も現れ、
一味加えているのが、これまた心憎いばかり!
冒頭の快活さを呼び戻してからはいよいよ生気あふれるダイナミックな音楽となり、高揚の頂点でシンコペーションのフレーズを”スカッ”とキメて全曲を終う。

♪♪♪

さて音源である。
フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル
「4匹の猫」収録、名手ぞろいのPJBEによる永遠の名盤!
音色・歌い方・構成感・アンサンブルの見事さと、どれをとっても他の追随を許さない。プレイヤー全員が素晴らしいが、この演奏を聴くとHornのアイファー・ジェームズ(Ifor James)の凄さは突き抜けているし、またつくづく「あーっ、やっぱりレイモンド・プレムル(Ramond Premuru)のBass Tromboneって最高!」と思わされるのだ。

ザ・デンバー・ブラス(The Denver Brass)
「4匹の猫」「もう3匹の猫」全7曲を収録。
チームワークの良いアンサンブルで、「歌心」を大切にした演奏である。



ジュネス・ミュジカル・ワールドオーケストラ
オールブラス・アンサンブル
(All-Brass-Ensemble Jeunesses Musicale
World Orchestra)

こちらも「4匹の猫」「もう3匹の猫」全7曲を収録。とても小気味良い、リズム感溢れる演奏。メリハリがハッキリしているが、ややニュアンスを欠くか。

※左上画像:The Denver Brass
右上画像:All-Brass-Ensemble Jeunesses Musicale World Orchestra


【その他の所有音源】
シンフォニア・ヴァルソヴィア・ブラス (「三匹の猫」)

♪♪♪

2017年の夏、私も遂にこの「猫組曲」を実演する機会に恵まれた。Bass Tromboneパートにて「ミスター・ジャムズ」「クラーケン」の2曲をステージで演ることができたのである。
予ての想像通りとても素敵な楽曲であり、洵に楽しい演奏体験であった。しかし実際に触れることのできた幸福感を味わう一方、やはり”聴かせる”のはとても難しい楽曲であるということも実感させられた。

今回の演奏に際し、気持ちも新たにPJBEの録音を聴いた。そして聴くたびにPJBEというアンサンブルの変らぬ凄さを、またも痛感することになった。
PJBEはそもそも音自体が凄い。質感が充実しているというか、本当に「全て」の音が、一つ一つしっかりと響いているのである。(ああ、金管奏者の端くれとして、かくありたいものだ。もちろんとても無理だけど、少しでも近づきたい…。)

そして旋律の歌い方の卓越ぶり…決して淀むことのない音楽の流れ、メリハリの効いたコントラスト -テンポも揺れておりデジタルな凄みがあるといった類の演奏ではないが、PJBEのスタイルにより超高次元で完結したその演奏にはただ脱帽というほかない。PJBEの演奏の前では、どの演奏も大人と子供ほどの落差を感じてしまうのだ。

♪♪♪

「もう3匹の猫」ではThe Denver Brassも、All-Brass-Ensemble Jeunesses Musicale World Orchestraもともに健闘している。この曲の魅力は充分伝わるであろう。

しかし、である。
この「もう3匹の猫」においても、フィリップ・ジョーンズやジョン・フレッチャーのいた、全盛のPJBEの演奏が存在したなら…。

-と、無いものねだりをしたくなるのは、決して私だけではあるまい。

(First Issued on 2006. 6.13. / Overall Revised on 2017.9.6.)

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